月商別の運営

月商30万円のEC運営:固定費を抑えて検証する

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布製ポーチを色違いで10SKU(色やサイズ別の在庫単位)そろえ、一人で運営している架空のネットショップを考えてみます。1注文あたりの平均額が税込5,000円で月に60件ほど注文が入る段階では、売れない色の扱いや有料サービスの契約に悩む場面も増えてきます。売上を伸ばす施策を焦る前に、まずは商品が1つ売れたときの内訳と、毎月かかる費用を整理してみましょう。

30万円売れたら、その分使ってもいい?

売上として計上された金額と、手元に残って実際に使えるお金は別物です。商品の仕入れ代金や配送料、決済ごとに引かれる手数料などがあるため、月商(一定の月に計上した売上)と入金(銀行口座などに入るお金)は分けて管理する必要があります。

たとえば、初期費用や月額費用が0円のサービスであっても、注文ごとに費用が発生します。BASEの料金プラン・手数料(2026年10月時点)のように月額無料のプランでも、決済手数料やサービス利用料がかかります。また、Shopify Paymentsの支払い詳細で確認できるように、手数料や返金分があらかじめ差し引かれた金額が口座へ振り込まれます。

さらに、商品の仕入れ代金を先払いで支払う日と、購入者からの売上代金が口座へ入金される日にはズレが生じます。売上の合計額をそのまま使える資金と見込まず、手元の予定表で支払日と入金日を別々に記録しておくことが大切です。

1注文で、広告に使う前はいくら残る?

代表商品の採算を確かめるには、販売価格から原価(仕入れ代金など)、決済手数料、店負担送料(店が支払う配送費)、梱包資材費を順番に差し引きます。

税込5,000円の布製ポーチが単品で1点売れた場合の架空例(すべて税込ベースの計算)で見てみましょう。

  • 販売価格:5,000円
  • 商品原価:2,000円
  • 仮の決済手数料(説明用の仮率3.6%):180円
  • 店負担送料:600円
  • 梱包資材費:80円

これらを差し引くと、広告や月額サービス費を使う前の手残り額は2,140円(5,000円−2,000円−180円−600円−80円)となります。ここでの3.6%は計算を分かりやすくするための仮の料率であり、特定の決済サービスの総手数料を示すものではありません。

この2,140円は最終的な利益ではありません。ここからさらに月々の固定費や広告費、返品にかかる費用などが引かれる前の段階であることを押さえておきましょう。

税込5000円の架空注文の残額を、共通の縮尺の横棒5本で示す。売上5000円から商品原価2000円を引くと3000円、仮の決済費180円を引くと2820円、店負担送料600円を引くと2220円、梱包資材80円を引くと2140円になる。各棒はその段階の残額であり足し合わせない。決済3.6%は特定サービスの条件ではない仮率。広告費・月額サービス費・返品費用等を引く前なので2140円は最終利益でもそのまま使える広告予算でもない。

月額5,000円は、今の店に必要?

固定費を新しく増やすかどうかは、現在どの作業に手間取っていて、その機能を月に何回使うかを確かめてから判断します。

たとえばShopifyの料金プラン(2026年10月時点)を見ると、日本向けのBasicプランは、適用される税金を除く通常料金で月払い4,850円、年払いの場合は月換算3,650円(1年分43,800円の一括前払い)となっています。Shopify利用規約(第5条5項)にあるとおり掲載料金には税金が含まれておらず、Shopifyの請求サイクルも30日または1年単位です。年払いは開始時に一括前払いとなり、原則として返金されません。

そのため、税別の月額や年払い総額を、税込5,000円といった仮予算と条件確認なしにそのまま比べることはできません。

一方、前述のBASEの料金表(2026年10月時点)のように月額無料の選択肢もありますが、月額無料とは本体の月額が0円という意味であり、注文ごとの手数料が0円になるわけではありません。

月商30万円に達したからといって、有料プランや追加アプリの契約が必須になるわけではありません。まずは現在の帳票作成や梱包作業に月何時間使っているかを記録し、本当に作業時間が減らせる見込みが立ってから契約を検討するのが安全です。

月の費用を引くと、何が分かる?

1注文ごとの計算に、毎月発生する広告費や固定のサービス費を合わせると、表に挙げた費用を引いた差額が分かります。

税込平均5,000円の注文が月に60件入る架空の店舗例で、月の収支をまとめてみます。すべて税込ベースの架空値として計算しています。

横にスクロールして表全体を確認できます。
項目 金額(税込) 計算内訳
売上高 300,000円 5,000円 × 60件
商品原価 120,000円 2,000円 × 60件
仮決済手数料 10,800円 売上の3.6%(説明用仮率)
店負担送料 36,000円 600円 × 60件
梱包資材費 4,800円 80円 × 60件
集客広告費 20,000円 月の仮予算
月額サービス費 5,000円 月額サービス費の仮定
記載費用合計 196,600円 6費目の合計
記載費用控除後の残額 103,400円 300,000円 − 196,600円

この103,400円は、あくまで表に挙げた6費目だけを差し引いた残額です。

実際の運営では、このモデルに含まれていない費用(返品や値引きによる売上減、梱包作業などの人件費、銀行の振込手数料、各種税金など)が発生します。また、売上データが計上された日と、手数料などが引かれて口座へ入金される日には時期差があります。Shopify Paymentsの支払い詳細などで入金サイクルを確認し、この残額がそのまま口座残高や自由に使える生活費になるわけではない点に注意しましょう。なお、すでに月額サービス費や広告費も引いているため、この数字は限界利益とも異なります。

集客を増やすなら、いくらまで試す?

広告などの集客費用を増やす際は、代表商品の1注文あたりの採算をもとに、事前に損失を許容できる検証の上限金額を決めておきます。

1件の注文を獲得するためにかかった広告費をCPA(顧客獲得単価、ここでは1注文あたりの獲得費用)と呼びます。先ほどの1注文の計算では、広告を引く前の手残りが2,140円でした。ただし、この2,140円をそのまま広告費の上限にしてしまうと、店舗全体の固定費や返品などの費用を賄えなくなってしまいます。

集客を試すなら、小さく予算を区切るのが堅実です。たとえば「初回注文の獲得CPA目標を1,500円と仮定し、まず10件の反応を確かめるために上限15,000円まで試す」といった枠組みを設定します。この15,000円はあくまで仮のテスト枠であり、予算を使えば確実に10件の注文が入る保証はありません。また、先ほどの月間モデルにある広告費20,000円とは別のテスト案ですので、手元の費用表で二重に足し合わせないよう注意してください。

売れていない色を、また仕入れていい?

動きが鈍い色がある場合、すぐに同じ数量を追加発注するのではなく、SKUごとの販売実績と納期を確認します。

商品の販売動向を確かめるには、管理画面のデータが役立ちます。たとえばShopifyの注文エクスポート機能を使うと、注文データをCSV形式で出力できます。複数商品が同時に買われた注文はCSV上で商品ごとに行が分かれる点に注意しながら、SKUごとの販売数量を集計します。

ポーチ10SKUのうち動いていない色があるなら、追加発注をかける前に商品ページの写真の見せ方や季節要因、最小発注ロットを確認します。売れ筋の色であっても、仕入れの支払いが先行して売上の入金前に資金不足に陥るリスクがあるため、納品までの日数と手元の資金予定を照らし合わせて発注を判断しましょう。

今月は、どの一つを試してみる?

収支を安定させる第一歩は、主力商品1つの費用内訳を正確に書き出し、現状に合った検証を1つだけ選んで実行することです。検証とは、かけた費用と得られた注文結果を記録し、その施策を続けるかどうかを判断する取り組みを指します。

写真の撮り直しや説明文の改善、上限金額を決めた集客テスト、あるいは売れ行きに応じた発注数の見直しなど、現在の課題に直結する行動を一つに絞り込みます。店主一人で月20時間の作業時間を確保しながら、無理なく続けられるかどうかも大切な判断基準です。

もし受注や発送の手作業が増えて作業時間を圧迫し、別の担当者へ実務を渡す仕組みを整えたい場合は、手作業を標準化するを参考に手順書の作成や作業の切り分けを検討してください。今すぐ有料サービスの契約を増やす必要はありません。まずは手元の代表商品の採算欄を1行ずつ埋めることから始めてみましょう。


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