PRACTICAL GUIDE

ECの月次締め手順

管理画面の月商を転記しただけでは、ECの月次締めは終わりません。注文の取消・返金、決済口座の未入金、倉庫在庫、広告の調整、未請求の配送費まで、締め日時点の根拠と担当をそろえます。

01

締め日・タイムゾーン・採用日を先に固定する

02

売上・決済・在庫・費用を別々に照合する

03

未確定項目を0円や推測で埋めない

STEP 01

月次締めの完了条件を先に決める

締め対象月、締め日時、タイムゾーン、初回集計日、確定日、責任者を一枚に書きます。完了は数字を入力した時点ではなく、売上・決済・在庫・広告・物流の根拠資料が保存され、差額と未確定項目に担当・期限が付いた状態です。速報値と確定値を同じ列へ上書きせず、締め後の訂正は調整日と対象月を残します。

STEP 02

売上は注文・取消・返金を同じ定義で締める

チャネルごとに総商品売上、値引き、取消、返品・返金、送料、税、ギフトカード等を分け、純商品売上の式を固定します。Shopifyの販売レポートは販売と売上取消を扱いますが、顧客との資金移動そのものを追うレポートではありません。注文日、売上取消の処理日、発送日など何を採用したかを書き、月末後に処理した前月注文の返金を当月売上と混ぜません。

STEP 03

決済は銀行着金だけでなく期末残高まで合わせる

決済事業者ごとに、期首残高、決済総額、手数料、返金、チャージバック、保留、調整、銀行入金、期末残高を照合します。Shopifyの支払い照合レポートやStripeの入金照合・残高レポートは、販売レポートとは期間基準や目的が異なります。入金IDと取引IDで橋渡しし、翌月入金、失敗、準備金、原因未確定の差額を未決一覧へ残します。

STEP 04

在庫はSKU・場所・状態別の締め時点を保存する

締め日時点のSKU、バリエーション、ロケーション、販売可能、確保済み、販売不可、入荷予定を保存し、実地棚卸や倉庫明細との差を理由別にします。期首+入荷+返品再入庫-販売・出荷-廃棄・紛失±調整=期末という数量の橋を作ります。商品原価や棚卸資産の会計・税務処理は、数量管理と分けて証憑を会計担当へ渡します。

STEP 05

広告は配信費と請求額を別の表で照合する

媒体画面では月内の配信費をチャネル・キャンペーン別に締め、請求側では支払い、税、調整、クレジット、前月残高を確認します。Google 広告では停止後も停止前に発生した費用が請求される場合があり、取引画面には費用、支払い、調整、税などが月別に表示されます。カード引落額をそのまま当月の広告配信費にせず、未払・前払・調整の時期差を残します。

STEP 06

配送・倉庫費は出荷実績と請求条件を結ぶ

出荷件数だけでなく、サイズ、地域、温度帯、分割、保管、入庫、返品、梱包資材、付帯作業を請求単位に合わせます。月末時点で請求書が未着なら、出荷・作業明細から見積額を未確定として分け、前月見積と確定請求の差を当月の調整一覧へ載せます。平均単価で差を消さず、送り状番号、倉庫作業ID、請求行まで追える状態にします。

STEP 07

SaaS・外注・年払いを利用月と支払月で分ける

カート、アプリ、OMS、会計、制作、運用代行などは、契約名、対象期間、従量条件、税区分、請求日、支払日を記録します。年払いを支払月へ全額置いた資金繰りと、月別の運営判断に使う配分を同じ数字として扱いません。会計上の費用計上や前払処理は契約・証憑を基に会計担当や税理士へ確認します。

STEP 08

未確定・未照合を無理に0円へしない

未着の配送請求、未処理返金、決済保留、広告調整、在庫差には、見積額または数量、根拠、確度、担当、確認先、期限を付けます。原因不明の差額を『雑費』『その他』『誤差』へまとめると、翌月も同じ差が残ります。金額的重要性と期限は自社の会計方針で決め、確定後は元データを消さず調整記録へつなぎます。

STEP 09

締めた数字から翌月の一手を一つ決める

確定後に、予算差・前月差の大きい項目を商品、チャネル、原因へ分解します。売上だけ伸びて決済差や返品が増えた、広告費は計画内でも粗利が減った、在庫差が特定倉庫へ集中した、という関係を見ます。対策は広告上限、発注量、送料条件、返品ページ、照合手順など一つに絞り、担当・期限・翌月の確認指標を決めます。

WORKED EXAMPLE

具体例:純商品売上135万円から記載費用96万8,600円を照合する月

以下は一店舗・一通貨の編集部モデルです。税、給与、家賃、一般管理費、資金移動などを網羅しておらず、会計上の売上・営業利益・課税所得・現金残高を示す例ではありません。自店の資料と会計方針へ置き換えます。

総商品売上販売レポートの同一定義
1,500,000円
値引き商品売上から分離
-60,000円
取消採用日を固定
-40,000円
返品・売上取消処理日と対象注文を記録
-50,000円
純商品売上150万円-6万円-4万円-5万円
1,350,000円
商品原価数量・原価の根拠を保存
540,000円
決済費決済明細と照合
48,600円
配送・梱包未着分は見積と明示
180,000円
広告配信費請求差は別途照合
150,000円
SaaS対象期間を記録
30,000円
返品処理費送料・検品・再梱包
20,000円
計算結果純商品売上1,350,000円=1,500,000円-60,000円-40,000円-50,000円、記載費用968,600円=540,000円+48,600円+180,000円+150,000円+30,000円+20,000円、記載費用控除後の残額381,400円=1,350,000円-968,600円

この数字から分かること38万1,400円は、ここに記載した運営費だけを控除した残額です。利益や現金と呼ばず、未着の配送請求、決済期末残高、広告調整、在庫差を未決一覧で確認し、給与・家賃・税など自店に必要な項目を会計担当と追加してから経営判断へ使います。

DECISION CORE

月商ではなく、根拠のそろった月を締める

ECの月次締めは、販売画面の合計を転記する作業ではありません。売上、決済残高、在庫、広告、物流を同じ基準日で止め、差額と未確定項目を次月へ渡します。

01

六つの締めを分担する

売上、決済、在庫、広告、物流、契約費を資料・担当・期限付きで分け、最後に一つの確認表へ集めます。

02

差額を説明可能にする

金額を無理に一致させず、期間差、保留、未請求、返金、調整、在庫差へ分類し、対象IDと根拠を残します。

03

翌月の変更は一つに絞る

確定値から予算差の最大要因を選び、広告上限、発注量、送料、返品、照合手順の一つへ担当と期限を置きます。

TWO CASES

条件が変わると、判断も変わる

一つの結論を全事業者へ当てはめず、運営条件の違う2ケースで確認します。

純商品売上135万円の運営月

前提
総商品売上150万円、値引き6万円、取消4万円、返品5万円。記載費用は968,600円。
判断
差引381,400円は給与・家賃・税などを含まないため、営業利益や現金残高とは呼べません。
次の行動
未着請求、決済期末残高、広告調整、在庫差を閉じ、自店に必要な費用を会計担当と追加します。

配送請求が締め日に未着

前提
出荷300件は確定、倉庫請求書は翌月10日、サイズ別料金と付帯作業あり。
判断
平均送料だけで確定すると、サイズ・返品・付帯作業による差を翌月の原因不明費へ送ります。
次の行動
出荷・作業明細から根拠付き見積を未確定として置き、請求受領日に差額と対象月を調整記録へ残します。

ケース内の数量・金額は判断方法を説明するモデルです。契約や予算決定には自社の実績値と最新の公式条件を使用してください。

FAQ

判断前によく出る疑問

月次締めは月末当日に終える必要がありますか?

一律の期限はありません。初回集計日と確定日を決め、返金・請求・入金の到着条件に合う締めカレンダーを作ります。

売上と銀行入金が一致すれば締められますか?

一致だけでは不十分です。手数料、返金、保留、前月残高、翌月入金を含む決済口座の期首・期末まで照合します。

未着の請求書は0円でよいですか?

0円と決めず、利用・出荷明細から見積可能なら未確定額として根拠を残し、確定請求との差を後日調整します。会計処理は担当者へ確認してください。

締め後に返金が発生したら前月を直しますか?

元データを黙って上書きせず、返金の処理日、対象注文、対象月、調整日を記録します。採用する会計処理は自社方針を確認します。

FINAL CHECK

実行前のチェックリスト

  • 対象月・締め日時・タイムゾーン・責任者を固定した
  • 総売上・値引き・取消・返品・送料・税の定義を記録した
  • 決済口座の期首・明細・銀行入金・期末残高を照合した
  • SKU・ロケーション・在庫状態別の締め時点を保存した
  • 広告配信費と請求・支払・税・調整を分けた
  • 配送・倉庫の出荷実績と請求行を結んだ
  • SaaS・外注の対象期間と支払日を記録した
  • 未確定・未照合へ根拠・担当・期限を付けた
  • 締め後の訂正を調整記録へ残した
  • 翌月に変える一項目と確認指標を決めた
PRIMARY SOURCES

公式出典

  1. Shopifyの販売レポートShopifyヘルプセンター
    • 総売上、値引き、売上取消、純売上、送料、税、総売上高の定義
    • 販売レポートの売上は顧客との資金移動を追跡するものではないこと
    • 平均注文額や注文数の公式レポート上の計算条件
  2. Shopifyの在庫レポートShopifyヘルプセンター
    • 月末在庫数・在庫価値、日次販売数、在庫残日数などの公式レポート
    • 在庫消化率が販売数÷販売数と期末在庫数の合計で計算されること
    • 在庫指標の対象期間、反映遅延、削除済み商品・ロケーションに関する条件
    • 支払い照合レポートで選択期間・通貨のShopify Payments取引、手数料、支払いの内訳を確認できること
    • 支払い詳細を表示・エクスポートできること
    • 支払いの失敗、減額・未入金、返金、準備金、保留が個別の確認対象であること
    • 残高レポートは決済残高を銀行口座のように期間照合する用途であること
    • 入金照合レポートは自動入金ごとに含まれる取引を照合する用途であること
    • 即時入金は含まれる取引をStripeが特定できず事業者側の照合が必要であること
    • 残高レポートと入金照合レポートでは期間へ含める際の採用日が異なること
    • 月ごとの広告費用、支払い、調整、税などを取引明細で確認できること
    • 請求上の取引日時や集計基準が広告アカウントの表示条件と異なる場合があること
    • 広告を停止した後も、それまでに発生した費用が請求される場合があること
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