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セット販売の価格と在庫管理|何円残り、何セット売れるかを計算する
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マグカップとクロスを組み合わせてセット販売するとき、値引き後に今回の費用を引いて何円残るかという「採算の計算」と、手元の在庫から何セット出荷できるかという「組める数の計算」は全く別の作業です。セットにすれば客単価や売上が自然と伸びるわけではありません。まずは1種類の組み合わせに絞り、費用を引いた残額と在庫の動き、出荷から返品までの記録の流れを1つずつ確かめることが大切です。
ここでは、国内向けにマグカップと布小物の計12商品を販売している架空のショップを想定します。自宅の作業スペース(1出荷拠点)で担当者1名が週2時間ほど時間を使い、追加の準備予算として税込5,000円を仮に置いて、固定セット1種類を試す準備を進める場面です(通常の商品原価、発送費、決済手数料、カートの月額利用料などは別です。時間や予算は相場や実績を示すものではなく、今回の検証で置いた条件です)。なお、本稿で紹介するShopifyの機能や仕様は、2026年10月9日時点で確認した公式情報に基づいています。
何が何個入るセットにする?
セットの価格を考える前に、まず決めるべきなのは中身の商品コード、色、数量、そしてどんな場面で使ってもらうかです。中身があいまいなまま価格決めを先行させてしまうと、後からの梱包作業や在庫管理で数え間違いが起きやすくなります。
セットを構成する個別の商品を「構成品」、色やサイズごとに在庫を分ける管理単位を「SKU(エスケーユー)」と呼びます。今回の例では、お茶の時間を楽しむセットとして「白マグ2個+クロス1枚」という固定の組み合わせを扱います。
カートシステムとしてShopifyを使う場合、固定セットや複数個パック向けの無料アプリとして「Shopify Bundles」が提供されています(Shopifyヘルプセンターのバンドルの適格性と考慮事項)。このアプリでは固定セットであっても購入者が色などのバリエーションを選べるように設定できますが、今回の例では管理手順をシンプルに確かめるため、あえて「白マグ2個+クロス1枚」に色も数量も固定します。なお、無料で提供されているのはアプリ自体であり、ショップ運営にかかる全体の費用が無料になるわけではありません。
あわせて、注文が入ってから棚の単品を集めて1箱に詰める方式にするか、あらかじめ箱詰めを済ませてセット専用の在庫として置いておく方式にするかも、この段階で決めておきます。
3,400円で売ると、費用を引いて何円残る?
セット商品を値引きして売るなら、単品で同じ数を買ってもらったときと比べて、今回の費用を引いた残額がどう変わるかを比べます。売上から商品原価、決済手数料、店が負担する配送料、梱包資材費を引いて残る額を確認しましょう。
ここで算出する残額は「注文貢献額」と呼びます。これは今回挙げた変動費用を差し引いた後の金額であり、広告費、人件費、家賃、カートの月額利用料、廃棄や返品の損失、税金などを引く前の数値です。手元の現金残高や最終的な営業利益そのものではありません。
今回は社内での試算として、すべて税抜、購入者から受け取る送料は0円、同じ1注文・1箱で発送する同一条件で比較します。決済手数料の一律4%は説明用の計算条件であり、実際の決済代行会社やプランの実料率・消費税区分とは異なります(実際の比較では自店の決済明細の実額と税条件に置き換えてください)。単品購入とセット販売の費用と残額の内訳は次の通りです。
| 項目 | 単品同時購入(白マグ2個+クロス1枚) | 固定セット販売(1セット) |
|---|---|---|
| 販売価格(税抜) | 3,600円 | 3,400円 |
| 商品原価合計 | 1,500円(600円×2+300円) | 1,500円(600円×2+300円) |
| 店負担配送料(実費) | 500円 | 500円 |
| 梱包資材費 | 100円 | 100円 |
| 仮決済手数料(4%) | 144円(3,600円×4%) | 136円(3,400円×4%) |
| 注文貢献額(残額) | 1,356円 | 1,164円 |
計算の結果、残額の差は192円になります。売価を200円引き下げても、売価に連動して決済手数料が8円下がるため、残額の落ち込みは192円にとどまります。このように費用条件をそろえて計算することで、値引きが残額に与える影響がはっきり見えてきます。
送料と梱包は、本当に同じでいい?
前節の試算では配送料500円・梱包資材費100円を同額と仮定しましたが、セットにしたときに箱の寸法、総重量、使う資材、梱包作業の手間が本当に同じで収まるかを実物で確かめる必要があります。
Shopifyの「配送プロファイル」とは、商品や配送地域ごとの送料計算ルールをまとめる設定画面のことです。Shopifyの仕様ではセット商品専用の配送プロファイルは作成できず、中身の構成品に割り当てられた配送プロファイルをもとに購入者画面の配送料が計算されます(Shopifyヘルプセンターのバンドルの適格性と考慮事項)。
ただし、購入者画面に表示される送料設定と、店が運送会社へ支払う運賃実費は別物です。布小物1枚だけなら薄型の箱や封筒で安く送れていたとしても、マグカップが2個加われば箱の容積や重さが変わり、運送会社の料金区分が上がる場合があります。さらに、マグカップ同士が当たって割れないよう緩衝材を巻いたり、仕切りを入れたりする手間が増えれば、資材費だけでなく作業にかかる時間も増えます。
「セットにすれば送料が一律でお得になる」と決めつけず、完成した1箱を実際に組み立てて寸法と重量を測り、自店の契約運賃や資材実費に合わせて試算へ反映させることが欠かせません。
17個のマグから、何セット組める?
セットの中身で必要な数量がそれぞれ違う場合、組めるセット数の上限は在庫の合計ではなく、「構成品ごとの必要数で割った最小値」で決まります。
ここでいう「利用可能在庫」とは、同一時点・1つの出荷拠点で、すでに注文が入って引き当てられた分、傷や汚れのある不良品、未入荷の仕入れ予定分を除き、今すぐ出荷できる現物の数量のことです。通常の在庫追跡が有効で「売り切れ時も販売を続ける」が無効になっている前提で計算します(在庫追跡が無効な商品や売り切れ後も販売を継続する設定の商品はShopify Bundlesの在庫計算から除外されますが、計算から外れたからといって物理的な現物が増えるわけではありません)。
自宅の出荷拠点に、現在販売できる白マグが17個、クロスが10枚ある場合の上限計算は次の通りです。
| 構成品 | 利用可能在庫数 | 1セットの必要数 | 組めるセット数の計算 | 最大セット数 |
|---|---|---|---|---|
| 白マグ | 17個 | 2個 | 17 ÷ 2 = 8.5 | 8セット |
| クロス | 10枚 | 1枚 | 10 ÷ 1 = 10.0 | 10セット |
| 完成セット上限 | — | — | min(8, 10) | 8セット |
この場合、白マグのほうが先に上限へ達するため、組めるのは8セットまでです。8セットを販売すると白マグ16個とクロス8枚を使い、手元には白マグ1個とクロス2枚が余ります。
また、Shopify Bundlesは拠点別ではなくショップ全体の在庫に基づいて追跡される仕様があります(ShopifyヘルプセンターのShopify Bundles)。複数拠点を運用している場合、ショップ全体で数が足りていても、同じ拠点にすべての構成品がそろっているとは限らない点にも注意が必要です。
単品が売れたら、セット数と価格はどう変える?
同じ現物を使って単品販売とセット販売を同時に行うときは、手元の在庫以上に注文を受けてしまう売り越しを防ぐ必要があります。
注文が入るたびに棚から品物を集める方式では、単品が売れて構成品の在庫が減ると、組めるセット数の上限も変わります。たとえば前節の8セットを販売した続きではなく、元の在庫(白マグ17個・クロス10枚)から単品の白マグが3個売れた別の例で考えると、残る白マグは14個になります。このとき、同じ時点の利用可能在庫で再計算すると上限は7セット(14 ÷ 2 = 7)となります。ただし、Shopify内や外部の連携先でカートの表示数が更新されるタイミングは利用環境によって異なり、即座に反映されることが保証されているわけではありません。
一方、あらかじめ8セット分を箱詰めしておく方式をとる場合は、箱詰めした白マグ16個とクロス8枚を「専用在庫」として扱い、単品用の棚から物理的にも管理上も切り離します。この2つの方式は全く別の運用方法なので、両方の在庫を同時に足し合わせて二重に計上してはいけません。
また、「在庫の連動」と「価格の連動」は別物です。Shopify Bundlesでは、構成商品の単品価格を変更しても、セット商品の販売価格は自動的に変わりません(ShopifyヘルプセンターのShopify Bundles)。仕入れ原価や単品の定価を見直したときは、セットの販売価格や注文貢献額も手動で再計算・更新する必要があります。
注文の中身は、出荷先まで伝わる?
商品ページでセットとして販売していても、出荷を行う現場に中身のSKUと数量が正しく伝わらなければ、入れ忘れや誤出荷の原因になります。セット名だけでなく、実際に箱へ詰める具体的な商品コードと個数が伝わる仕組みが必要です。
Shopify Bundlesを使って注文が入ると、注文データには親セットのSKUではなく、展開された構成品それぞれのSKUと数量が記録され、総重量も構成品から合算されます(ShopifyヘルプセンターのShopify Bundles)。
ただし、外部の倉庫管理システム(WMS)や受注管理システム(OMS)と連携している場合、展開された構成品のデータを相手側のシステムがそのまま読み取れるかどうかは個別の仕様によります。連携設定によってはセット名を未登録の1商品として扱ってしまい、中身の指示が出ないこともあります。
本格的に販売を始める前に、白マグ2個とクロス1枚を含むテスト注文や確認用の注文を作り、出荷指示や伝票に「白マグ × 2」「クロス × 1」の計3点として正確に出力されるかを確かめておきます。なお、Shopifyバンドルの利用には対応したオンラインストアや更新されたチェックアウトが必要で、定期購入や予約販売など一部の販売形態では非互換の条件があります(Shopifyヘルプセンターのバンドルの適格性と考慮事項)。今回は国内オンラインショップでの通常販売を例にしています。自店で利用予定の販売方法や販売チャネルがバンドルに対応しているかは公式の適格条件で直接確認し、未確認のチャネルへの適合を推測で判断しないようにします。
一部返品があったら、何を戻す?
セット商品を購入したお客様から「クロスだけ返品したい」といった連絡があった場合、返金する金額の計算と、戻ってきた現物の在庫処理は切り離して管理します。
セット販売で値引きを行っている場合、全体の代金を単純に商品数で3等分して返金額を決めるのは適切ではありません。Shopify Bundlesでは、セット全体に適用された割引額が構成品それぞれの元価格に応じて比例配分され、税金も構成品ごとに計算されます(ShopifyヘルプセンターのShopify Bundles)。注文管理画面で該当する注文を開き、値引きが配分された後の金額を確認したうえで、店舗の利用規約や返品ポリシーに沿って返金額を確定します。
返金手続きが終わったからといって、返送された品物を自動的に販売可能在庫へ戻してはいけません。戻ってきたクロスが未開封の良品なのか、使用済みや破損で再販できない状態なのかを目視で検品します。良品在庫へ戻すか、販売不可として別管理するかは、自店の品質基準と利用しているシステムの在庫手順に沿って処理します。また、購入者の手元に残っている白マグ2個と、返送されたクロス1枚の所在や状態を混同しないように管理します。
セット販売を始める際は、まず次の2つの行動から取り組んでみてください。
- 1セットあたりの価格表を作成・保存する:構成品の原価合計、配送会社へ支払う運賃実費、梱包資材費、決済手数料を並べ、値引き後の注文貢献額を自店の条件で計算して記録します。
- 確認用の注文で数量と返品手順を確かめる:テスト注文を作成して出荷伝票に構成品のSKUと数量(白マグ2個、クロス1枚)が正しく出るかを確認し、注文詳細で一部返品時の金額配分と検品後の戻し先手順を確かめておきます。
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