集客・購入改善

ECのリピート率・LTV改善|90日コホートの見方と施策

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リピート率が上がっても、値引きや配送の負担が増えていれば、売上から注文に直接かかった費用を引いた額は増えないことがあります。初回購入から同じ90日を見て、戻ってきた人数と、費用を引いた金額を分けるところから始めます。

本稿では、布小物10商品を国内へ自宅発送する架空店(担当1名、週2時間で振り返り、再購入施策の支出枠は税込月5,000円。商品原価・通常配送・新規広告・店固定費は別)を例にします。初回顧客の記録を同じ経過日数で比べ、費用を引いた注文貢献をもとに次の打ち手を判断する手順を整理します。

リピート率とLTVは、何を数える数字?

店舗の再購入状況を見るときは、「人数」「注文回数」「金額」を分けて数えます。再購入した人の数と、発生した再注文の件数は別々に記録します。

顧客から得る価値を表すLTV(本稿では初回から90日間に限った値)も、売上の累計と、対象費用を引いた金額とで名前を分けて管理します。この90日の実績は、生涯全体の売上予測ではありません。

コホートとは、初回購入の時期が同じ顧客の集まりです。たとえば、初回購入者200人のうち60人が再び購入した場合、再購入率は30%です。このとき、1人が期間中に3回買っても、再購入人数は「1人」、再注文件数は「3件」と数えます。人数と注文数を両方記録することで、特定の人が何度も買っているのか、多くの人が戻っているのかを把握できます。業界の平均値にとらわれず、自店の数字で変化を追います。

30・60・90日を、同じ条件で比べるには?

初回顧客を比べるときは、集計の分母となる顧客群と観測期間をあらかじめ固定します。観測期間とは初回購入から何日分を数えたかを表し、累計はその時点までの合計を指します。まだ90日を経過していない顧客を未購入として混ぜると、日数が足りないだけで率が下がって見えます。

集計では、初回注文の支払と出荷を確認した日を「0日目」と定めます。テスト注文や出荷前キャンセルは、初回の母集団に入れません。顧客ごとに30日、60日、90日が経過した時点で、有効な再注文を累計します。たとえば初回確定顧客200人のうち、再購入した人が30日以内で累計30人、60日以内で累計50人、90日以内で累計60人と数えます。全額返金となった再注文は無効とし、処理中の注文は確定値と分けて「未確定」に置きます。初回母集団の200人は、後から率をよく見せるために縮めてはいけません。

なお、以下のShopifyやGA4の例と、この店内集計とでは起点の条件が異なります。

  • Shopifyの顧客レポートの新規・リピーター比較は、全注文履歴をもとに分類されます。開く操作や更新により数秒程度で最新データが反映されます(一部の顧客レポートでは直近12時間が未反映の場合があります)。また、標準の顧客コホートはデフォルトで初回注文日を起点とし、週や月単位で集計されます。
  • GA4の維持率概要レポートのコホートは「初回アクセス日」が起点です。120日平均値も新規ユーザーの最初の120日間の平均収益を示します。

ツールのアクセス起点や月単位の表示と、自店で初回支払・出荷完了日から追う90日間の実績は別物として扱います。

架空店の同じ初回確定顧客200人を、1点10人の20点で繰り返し表示した図。塗った点は再購入者、白い点は再購入を確認していない人。各顧客の初回支払・出荷確認の日を0日目とし、30日経過時は累計30人で15%、60日経過時は累計50人で25%、90日経過時は累計60人で30%。何回再注文しても再購入者は1人と数える。まだその日数を経過していない人を未購入として混ぜず、処理中の注文は未確定として別管理し、全額返金となった再注文は無効とする。本文の架空の自店集計で、GA4やShopifyの標準集計の再現でも、生涯実績の予測や施策の成果保証でもない。

売上が増えても、1人あたりいくら残る?

リピート施策の成果を測る際は、売上の大きさだけでなく、注文にかかった費用を引いた後にいくら残ったのかを確認します。本稿では、初回顧客1人あたりから得られた売上累計を「売上LTV」、売上から注文に直接かかった確定費用と施策直接費を引いた金額を初回顧客数で割った社内指標を「注文貢献LTV」と呼びます。これは全社の営業利益や最終利益、銀行口座の手元現金残高とは異なる指標です。

Shopifyのリピーターレポートで表示される合計支払い額には、税、値引き、送料、返金が含まれています。一方、GA4のeコマース測定では購入(purchase)と払い戻し(refund)が別イベントとして記録され、refundイベントには対応する取引ID(transaction_id)が送信されます。これらは計測や集計の仕組みであり、実際の返金処理や在庫・原価の訂正を自動で行うものではありません。

以下の表は、初回確定顧客200人を対象とした架空の社内管理データ(全額税抜)です。売上には値引きや返金をあらかじめ反映させた商品売上を採用し、顧客から受け取った送料や商品税は除外しています。費用項目には確定した商品原価、決済手数料、店舗負担の配送料、梱包資材費、返品実費、および再購入施策の直接費を含めています。店舗全体の固定費、共通人件費、新規獲得広告費、消費税はここには含めません。また、返金処理時に再販在庫へ戻った商品の原価は損失とせず自店の確定処理に合わせて整理し、売上で控除した返金額を費用側でも重ねて差し引くような二重控除は行いません。

横にスクロールして表全体を確認できます。
経過日数 0日目 30日目 60日目 90日目
初回確定顧客数 200人 200人 200人 200人
累計再購入者数 0人 30人 50人 60人
累計再購入率 0% 15% 25% 30%
累計売上(税抜) 1,000,000円 1,180,000円 1,320,000円 1,400,000円
累計対象費用(税抜) 600,000円 720,000円 820,000円 880,000円
累計注文貢献(税抜) 400,000円 460,000円 500,000円 520,000円
売上LTV(税抜) 5,000円 5,900円 6,600円 7,000円
注文貢献LTV(税抜) 2,000円 2,300円 2,500円 2,600円

90日時点の売上LTVは、累計売上1,400,000円を200人で割った7,000円となります。一方、対象費用880,000円を引いた累計注文貢献は520,000円であり、これを200人で割ると注文貢献LTVは2,600円です。売上だけを見ると初回時点の5,000円から7,000円へと2,000円伸びていますが、直接費用を考慮した注文貢献は2,000円から2,600円への600円の増加にとどまります。この累計600円の差額がそのまま新しい広告や施策に回せる自由な予算になるわけではなく、固定費や実際の入金時期を別途確認する必要がありますが、費用を一度だけ引いた注文貢献LTVを把握しておくことで、施策に使える現実的なコストの目安が見えてきます。

クーポンを送る前に、どこを直す?

再購入が進まないときは、割引クーポンを配る前に、商品をもう一度買う場面と初回購入後の困りごとを分けます。

購入周期とは、次の購入が必要になるまでの間隔です。布小物は日用品のように短期間で使い切る消耗品ではありません。ポーチの色違いをそろえる、知人へ贈るといった用途は考えられますが、これらは店舗側の仮説です。日数を決めつけず、注文履歴や問い合わせから実際の購入間隔を確かめます。

先に手をつけるべきなのは、初回の買い物での困りごとです。発送連絡の遅れ、サイズや質感の説明不足、届いた商品の破損、人気商品の欠品がなかったかを点検します。こうした問題が見つかったら、商品案内の追記や梱包手順の見直しから直します。まずは確認できた初回の問題への対応を優先します。

誰に、いつ案内を送ればよい?

再購入の案内を送る際は、全顧客へ一斉送信するのではなく、購入した商品や購入時期、確認できた困りごとなどの条件をもとに対象を絞り込みます。

共通の条件で顧客をまとめた集団を「セグメント」と呼びます。たとえばShopifyの顧客セグメント機能では、設定した条件に応じて該当する顧客が自動で追加や除外される「動的リスト」を作成できます。特定の商品を購入した顧客や一定期間購入がない顧客を抽出する際に便利ですが、条件の変化によってリスト内の人数は入れ替わります。そのため、前述した初回固定コホートの200人を固定して追跡する台帳とは使い分ける必要があります。

また、案内を送信する際には、事前の配信同意の有無を必ず確認します。Shopifyの顧客連絡先とマーケティング情報にあるように、プラットフォーム側ではチェックアウト時や登録時に販促の同意を収集する機能が提供されています。しかし、商品の配送や決済通知といった注文処理に必要な連絡先情報を取得しているからといって、それを販促メール送信への同意とみなすことはできません。

新色や関連商品の案内を検討する場合、過去の購入履歴とメール配信同意の両方が確認できた顧客のみを対象とし、送信直前にも配信停止の希望が出ていないかを確かめます。注文処理用の連絡先と、販促案内の配信対象は分けて管理します。

施策を続けるか、何と比べて決める?

案内を実施した後は、施策を行わなかった場合と比べてどれだけ上積みがあったか(増分)で継続を判断します。施策前後の数字を比べるだけでは、季節の変わり目や自然な再購入が混ざるため、前後の変化をそのまま施策の成果とは決められません。

第3節の表で見た注文貢献LTVの600円の増加(2,000円から2,600円)も、日数の経過による自然な再購入を含む期間全体の変化であり、施策単独の成果ではありません。効果を確かめるには、初回購入時期や商品、経過日数をそろえたうえで、案内を送った集団と送らなかった集団(非実施群)を比べ、1人あたりの平均注文貢献額にならして差を見ます。なお、非実施群と比較した場合でも、顧客の属性の違いが影響するため、施策の効果だと確定できるわけではありません。比較の条件差をメモに残しておきます。

施策の直接費用をすでに注文貢献の計算に含めている場合は、比較の際に二重に引かないよう整理します。施策を試すときは変更点を1つに絞り、「施策費用が税込月5,000円の枠を超えた」「配信停止が増えた」「問い合わせが増えた」といった停止基準をあらかじめ決めておきます。予算枠に収まっていても利益が出るとは限らないため、費用と問い合わせへの影響をもとに見直します。

次の90日へ、何を残して見直す?

週2時間の振り返りを続けるために、記録する項目を絞り込み、前提条件を残しておきます。

集計では、初回確定顧客の分母、経過日数の起点、売上と費用の範囲、試した1つの施策内容を記録します。処理中の返品や請求前の配送費などはゼロにせず、「未確定」として確定値と分けます。注文数が少ないうちは1件の増減で率が大きく動くため、割合だけでなく人数と未確定件数も並べて見ます。

次の振り返りに向けた行動は2点です。

  1. 初回確定顧客と、30日・60日・90日経過時点の人数・注文貢献をまとめた一覧を1枚作る。
  2. 問い合わせや注文履歴で見つかった顧客の困りごと(説明不足や発送連絡の遅れなど)を1つ改善する。

季節要因、欠品、価格変更があれば比較条件のメモとして残します。将来の再購入を見込んで新規獲得費用を無理に引き上げることは避け、手元の記録をもとに次の90日を観察します。


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