クラウド会計比較

freee会計 vs マネーフォワード クラウド:EC事業者向け比較

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布小物を50商品ほど扱い、総従業員10名(会計担当3名は内数、経費利用10名)で運営する架空のEC店舗を考えてみます。注文が増えて売上はあるものの、月末になると口座への入金と帳簿の数字が合わず、モールごとの手数料や返金の突き合わせに追われています。日々の取引を自社で記帳し、月次の確認や税務申告を税理士と分担する体制のもと、比較に使える時間は週2時間、ソフトの基本料金と経費の従量料金を合わせた予算は税別月1万円(税理士費用や他ソフト、連携アプリ代は別)を想定します。これは業界の相場や推奨予算ではなく、一店舗の試算条件です。

ソフトを選ぶ際は基本料金の数字だけで決めず、個人か法人か、誰が何を担当するか、利用しているEC販路、申告をどこまで自社で行うかをそろえて確認します。本記事では、片方を初心者用、もう片方を経験者用と固定せず、一つの月次データをもとに「freee会計」と「マネーフォワード クラウド」のどちらが自店に合うかを見極める基準を整理します。

どちらを選ぶ前に、自分の店の何をそろえる?

個人事業主と法人では選ぶプランが分かれており、社内でも帳簿をつける人と立替経費を申請する人では使う権限が違います。そのため、料金や機能を比べる前に、事業形態、誰がどの作業を担当するか、使っている販売経路の3点をそろえておく必要があります。

社内の役割には、帳簿の入力や売上・銀行明細の確認を行う「会計ユーザー」(経営者、経理担当、顧問税理士など)と、仕入や備品などの立替経費を申請・承認する「経費ユーザー」(従業員など)の2つがあります。

今回の架空法人では、従業員10名全員が帳簿をつけるわけではありません。帳簿を入力・確認する会計ユーザーは経理担当の3名(10名に含まれる内数)で、全10名は立替経費の申請や承認を行う人として数えます。

この役割の違いを分けないまま「10名」という全体の人数だけで料金表を見ると、必要以上に高いプランを選んだり、想定外の追加料金がかかったりします。また、一人で運営する個人事業主の方も、法人の複数名向け試算を自店の費用と思わないよう注意が必要です。まずは自分の店が個人か法人か、帳簿を入力する人数、経費を扱う人数、AmazonやShopifyといった販売経路を書き出しておきましょう。

架空の法人の人物図。全従業員10名を一つの枠内に描き、そのうち3名を会計担当として囲っている。会計担当3名は全体10名に含まれ、13名いるという意味ではない。この試算では当月の経費課金対象も10名と仮定する。実際の対象人数は各社の権限とその月の利用条件で確認する。個人事業主の料金例ではない。2026年10月確認。

個人と法人で、通常料金はどう違う?

個人向けと法人向けでは料金体系が明確に分かれており、支払方法(年払いまたは月払い)や消費税申告への対応有無によって選ぶべきプランが変わります。Web契約の通常料金(税抜、2026年10月時点)を比べるときは、年間契約の基本料金を12で割った「年払いの月換算」と、毎月支払う「月払い」の条件を区別して確認します。

なお、マネーフォワード クラウドの公式案内では、個人料金体系の一部改定が2026年12月、法人料金体系の一部改定が2027年6月に予定されています。本稿では現行時点の料金で比較しているため、契約にあたっては申込日や改定の適用日、最新の料金を各社公式ページで確認してください。

横にスクロールして表全体を確認できます。
対象 サービス・プラン名 月払い(税抜) 年額(税抜) 年払いの月換算(税抜) 主な機能・人数の条件
個人 freee会計「スターター」 1,780円 11,760円 980円 消費税申告は非対応。認定アドバイザー(提携税理士等)の招待枠を除きメンバー追加不可
個人 freee会計「スタンダード」 2,980円 23,760円 1,980円 消費税申告に対応。3名分の利用枠を含み、4人目以降は追加費用
個人 マネーフォワード クラウド「パーソナルミニ」 1,280円 10,800円 900円 消費税申告は非対応
個人 マネーフォワード クラウド「パーソナル」 1,680円 15,360円 1,280円 消費税申告に対応
法人 freee会計「スターター」 7,280円 65,760円 5,480円 会計メンバー3名込み。経費精算は1段階承認
法人 マネーフォワード クラウド「ビジネス」 7,980円 77,760円 6,480円 会計メンバー3名、経費チーム5名込み。口座と帳簿の残高照合、消費税申告書作成に対応

個人事業主で消費税申告が必要な場合は、各社とも対応する上位プラン(freeeはスタンダード以上、マネーフォワードはパーソナル以上)が選択肢となります。また、法人向けプランは基本料金に含まれる人数や承認段階などの内部統制機能が異なるため、同名のプランであっても個人と法人を混同せず、自店の事業形態に合わせた行を確認してください。

会計3名・経費10名なら、いくら見込む?

基本料金とは別にかかる追加費用(従量課金)は、従業員全体の人数だけで一律に決まるのではなく、帳簿を入力する権限を持つ人数と、経費精算の課金対象となる人数の組み合わせによって計算されます。

経費精算における課金対象者の数え方には両社で違いがあります。freeeは、その月に経費の申請または承認を行った人を対象とし、同一人物が同月に複数回操作しても1名として数えます(出典:freee中小企業向け料金、freeeヘルプセンター 申請承認機能の従量課金)。一方、マネーフォワード クラウド経費では、一般権限の従業員はその月に明細登録や申請を行った実績のある人が対象となるのに対し、承認権限や管理権限を持つ従業員は当月の操作がなくても課金対象に含まれます(出典:マネーフォワード クラウド従量課金FAQ、マネーフォワード クラウド経費管理者ガイド)。

ここでは、ECを運営する架空法人(全体10名、会計3名は10名の内数、当月は全10名が経費の課金対象条件に該当、年払い契約、追加オプションなし、税抜、2026年10月時点)を想定し、毎月10名が対象となる前提で試算します。基本料金は年払い、経費の従量課金は月ごとに発生する契約ですが、年間費用の目安として一表に集約します。

横にスクロールして表全体を確認できます。
サービス・プラン 年払い基本料金(税抜) 経費利用の従量課金(税抜) 月換算合計(税抜) 年間想定総額(税抜)
freee会計「スターター」 65,760円/年(5,480円/月換算)※会計3名込み 10名 × 300円 = 3,000円/月(36,000円/年) 8,480円/月換算 101,760円/年
マネーフォワード クラウド「ビジネス」 77,760円/年(6,480円/月換算)※会計3名・経費5名込み 超過5名 × 500円 = 2,500円/月(30,000円/年) 8,980円/月換算 107,760円/年

両社の年間差額は6,000円ですが、この差額だけで優劣を決めることはできません。freeeスターターの経費精算は1段階承認ですが、マネーフォワードのビジネスには口座と帳簿の残高照合機能が含まれるなど、提供される機能の範囲が同等ではないためです。また、この試算には給与計算、勤怠管理、法人税申告ソフト、税理士顧問料、外部連携アプリなどの費用は含まれていません。自社に必要な管理機能と業務範囲を踏まえて判断する必要があります。

AmazonやShopifyの売上は、そのまま入る?

連携対応と案内されていても、売上、決済手数料、返金などのデータがすべてボタン一つで自動同期されるわけではなく、販路ごとに取込手順や取得範囲が異なります。ここでいう「取込」とは、モールの管理画面にある取引明細を会計ソフトへ渡す処理を指します。

Amazonの出品売上について、freee会計ではAmazonセラーセントラルからダウンロードした「決済レポートV2」テキストファイルを画面へ手動でアップロードして取り込みます(出典:freeeヘルプセンター Amazonの売上を取り込む)。自動同期ではなくファイルを定期的に取り込む運用の設定となるため、取込期間の重複や、システムが暫定で割り当てた勘定科目(仮勘定)・税区分の確認が欠かせません。

一方、マネーフォワード クラウドでは「Amazon.co.jp出品者アカウント」と連携し、個々の取引データ(トランザクション)を元に明細を取得します(出典:マネーフォワード サポートサイト Amazon出品者連携の仕様)。注文番号と商品名が摘要に反映されますが、取引データを元に取得する仕組み上、発送日や決済日の違いによって同一の注文番号でも日付や金額が異なる複数の明細として取得される場合があります。なお、仕入や備品購入に使う「Amazonビジネス」アカウントの購入明細とは仕組みが異なるため、出品売上との取り違えに注意が必要です。

自社ECのShopifyについては、マネーフォワード クラウド会計・確定申告における従来の直接データ連携が2023年6月30日をもって終了しました(出典:マネーフォワード サポートサイト 重要なお知らせ)。Shopifyの取引データをマネーフォワードで扱う場合は、現行の連携候補経路やその利用条件について公式窓口や候補の提供者へ確認する必要があります。

freee会計でShopifyの取引を取り込む場合は、freeeアプリストアなどで連携候補の外部アプリを探すことができます。取り込めるデータの範囲(売上明細ごとか日次集計か、返金や割引の扱いなど)や契約条件・利用料金は提供元によって異なるため、候補ごとに詳細を確認して選定します。

取り込めたら、売上と入金は何を照合する?

販売データを取り込んで既に売上を記帳している場合、銀行口座への入金額をそのまま新たな売上として登録してはいけません。入金額は手数料や返金が差し引かれた後の金額であるため、販売・決済明細の各項目と照合して帳簿と突き合わせる必要があります。記録した売上代金と、実際の入金を突き合わせて残高を対応させる作業を「消込(けしこみ)」と呼びます。

架空の決済対象期間における現金照合の例(保留金や繰越金などの調整がない前提)で確認します。

  • 受取対象代金:300,000円
  • 期間内の返金:−10,000円
  • モール決済手数料:−15,000円
  • 銀行への実振込額:275,000円

この式は、販売や決済の明細における受取対象額、返金、手数料、振込額の現金を照合する順序を示す架空の計算例です。300,000円を会計上の当月売上と決めたり、返金や手数料の勘定科目、税区分、売掛金回収の仕訳を固定する根拠ではありません。実際の売上計上日、勘定科目、税区分などは、自社の取引契約や取引資料をもとに税理士等と確認して確定します。

実務で注意すべきなのは二重登録の防止です。販売データを取り込んで受取対象代金を計上している場合、銀行に入金された275,000円を新たな売上として再登録すると売上が二重に計上されてしまいます。銀行の入金明細は新たな売上ではなく、すでに記録した取引と対応を照合して確認します。

また、同一の注文番号であっても、売上発生時と後日の返品・返金時などで日付や金額が異なる別明細として記録されることがあります。注文番号が同じだからといって機械的に重複として削除せず、明細の日付や内容を確認したうえで照合を進める運用が必要です。

決算書と税務申告、相談はどこまで任せられる?

会計ソフトを契約しても、法人税申告書の作成や提出、個別の税務相談までが基本プランにすべて含まれているわけではありません。書類の役割として、事業の経営成績や財政状態をまとめる「決算書」と、税法に基づいて納税額を計算し税務署へ提出する「申告書」は別の書類です。

各ソフトで確認できる作成範囲は次のとおりです。

freee会計の場合、日々の記帳を行う「freee会計」の基本プランでは法人税申告書を作成できません。同社の申告システムを利用して自社で法人税申告まで行う場合は、別契約の「freee申告 法人税」が必要となります(出典:freeeヘルプセンター freee申告の契約について)。

マネーフォワード クラウド会計も、ソフト単体での法人税申告書作成には対応していません。株式会社NTTデータの申告ソフト「達人シリーズ」と連携するための決算書中間ファイル出力機能を提供しており、申告書の作成は外部の申告システム側で行う設計となっています(出典:マネーフォワード サポートサイト 法人税申告への対応状況)。

また、サポート体制について、法人向けプランではfreeeスターターに電話窓口があり、マネーフォワード クラウド会計はメールやチャットで案内を受けられます(出典:freee中小企業向け料金、マネーフォワード クラウド法人料金詳細)。いずれもソフトの操作方法を案内する窓口であり、個別のEC取引における消費税区分の判断や申告書の作成代行といった税務実務は、サポート窓口へ依頼する対象ではありません。

自社でどこまで記帳し、決算書の作成、税務判断、法人税申告書の作成や提出を誰へ依頼するかは、事前に顧問税理士と業務の分担を確認しておくことが重要です。

自分の店に合うか、まず何を試せばいい?

自店に合うかを判断するには、無料の試用期間を活用してデータの取込から照合、経費承認、税理士との共有までの一連の工程を確かめることが有効です。無料試用の条件はそれぞれ異なります。

  • freee会計(法人):30日間の無料お試しが可能で、登録後に自動で有料支払いへ移行することはありません。初期費用も不要です(出典:freee中小企業向け料金)。
  • マネーフォワード クラウド(法人):1か月のトライアルが可能で、クレジットカードの登録は不要、終了後に自動請求されることもありません。ただし、試用期間中は一部の機能に制限があります(出典:マネーフォワード クラウド法人料金詳細)。

それぞれが検討候補となる条件は以下のとおりです。

  • freee会計が候補となる条件 Amazonの売上データをセラーセントラルの決済レポートV2手動アップロードで管理する手順が自社の運用に合い、経費精算が1段階承認で完結する体制に適しています。締めた月を変更できなくする機能(月締めロック)などを求める場合は、スターターだけで決めずにスタンダード以上の機能範囲を確認しておく必要があります。
  • マネーフォワード クラウドが候補となる条件 ビジネスプランに含まれる口座と帳簿の数字確認(残高照合)機能を活用して月次照合を行いたい場合や、あらかじめ含まれる5名分の経費枠を活用したい場合に適しています。なお、Shopifyを連携したい場合は旧直接連携が終了しているため、代替経路の対応範囲や追加費用をあらかじめ確認しておく必要があります。

まずは直近1か月分の販売・決済明細、銀行口座明細、立替経費の領収書と、社内の利用人数メモを手元に用意します。そのうえで、各社公式ページで最新の料金・試用条件を確認し、顧問税理士への共有可否も含めて自店の運用に合う候補を1つ選んで試用を始めてみてください。


※本稿に記載されている料金および機能仕様は、2026年10月9日時点の各社公式公開情報に基づいています。プラン改定や連携仕様の変更が行われる場合があるため、最新情報は必ず各社の公式ページにてご確認ください。

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